BRIDGE TERMINAL SECIプレイス Event Vol.4 20230623

「2,000万人」誰もが当事者となりうる聴覚障がいとの関わり方

演者:
野口 万里子氏(SHIONOGIコミュニケーションバリアフリープロジェクト発起人/塩野義製薬株式会社 ヘルスケア戦略本部CSR推進部)
塚本 泰規氏(SHIONOGIコミュニケーションバリアフリープロジェクトプロジェクトリーダー/塩野義製薬株式会社 ヘルスケア戦略本部CSR推進部)
大村信夫氏(パラレルキャリア研究家・SECI プレイスアンバサダー)
日時:2023/6/23(金) 19:00~20:00(講演会) 20:00~(QA&懇親会)
場所:オンライン(Teams)
発信地:BRIDGE TERMINAL
会費:無料
申込:277名
主催:Mission Lab/ 共用品ネット代表 塚本
後援・協力:塩野義製薬株式会社 /NPO法人SECI プレイス / BRIDGE TERMINAL

https://note.com/omuranobuo/n/n1206193815b9
◆当日の様子

今回は装備も特別仕様、女優ライトも導入してグレードアップ。
文字起こしアプリUDトークも用意して聴覚障がいの方にも楽しんでいただけるように字幕用モニターも用意しました。

◆講演の骨子

SHIONOGIと「コミュニケーションバリアフリープロジェクト」(以下CBF)について、
まずは現リーダーの塚本泰規さんから
ご説明をいただきました。

SHIONOGIと聞くと「ミュージックフェア」♪「セデス」「ポポンS」など誰もが一度は耳にしたことがあるかと思いますが、基幹業務は処方薬を中心に研究開発・製造・販売を行う創業144年目の製薬会社です。お薬を売っているのですが、売って終わりではなく、HaaS企業としてヘルスケア社会課題解決に向けた様々な取り組みをされています。

そのひとつが障がいを有する患者さんが服薬指導を受ける際のコミュニケーションバリアをなくす「コミュニケーションバリアフリープロジェクト」です。

CBF logo
CBFのロゴ

聴覚障がいを持たれる方々は生活のなかでの様々な音、信号の音、エレベーターの音、車のクラクション、など、音で知らせることが聞き取れないケースが多々あります。

医療の現場でも、薬の説明とかお医者様の説明を正しく聞き取れているのか…、例えば坐薬のことを「座って飲む薬」と誤認してしまうリスクなども報告されるなど、時として深刻な問題になりかねないこともあり、高齢化が進んで加齢性聴覚障がいも身近なものとなってきている現代においては決して他人事ではありません。

CBFプロジェクトの発起人でありリーダーとなったのが自らも聴覚障がいを持つ野口さんです。日常会話については聴覚口話法*(いわゆる読唇術)で相手のことを読み取る野口さんですが、会社では勝手が違いました。。。

・コミュニケーションがうまく取れません。
・説明を上手に聞きとることができません。
・簡単なやり取りさえうまくできません。

様々な健聴者のみを想定した社内のシステム、会議で飛び交う専門用語、唇が読めない向きでの会話、、聞こえない社員には全てが「バリア」となって立ちはだかったのです。

音声認識アプリにもバリアがありました。7〜8割は正しく認識・変換をされるので、言葉の文脈は十分に理解できます。もちろん誤字もゼロではありません。しかし一言一句、正しい変換を求めると、そこで「誤字があってダメだね」となってしまい、その後の会話でアプリが使用されなくなってしまいます。
100%の正しさ以上に、言葉の文脈を知ることが重要なのです。

そこで一念発起、部門横断プロジェクトを立ち上げるも、運営は苦難の連続。

低予算、経験・スキルの不足、そして聞こえないが故のハンデ。

そんなバリアだらけのプロジェクトを率いて、どうしたら延べ人数1350人となる全社的プロジェクトにまで成長させることができたのか。

野口さんは言います。

「プロジェクト達成のために大勢を巻き込むこと。そのために人を信じ、粘り強くあきらめない」ことだと。

「私たちができなかったことを、野口さんには思い切り活動して欲しい。」発足時の他の当事者のコメントに背中を押され、世の中のバリアを解消するのには、聞こえないこと当事者であることは強みであると気づいたとき、想いは使命に変わったのです。

2016年に社内啓蒙からはじまったプロジェクトは、製薬会社としての社会的責任を全うするという観点と合致しました。今では活動の範囲を社外にも広げ、医療従事者の方々への啓発活動、認知拡大をねらいとしたクラウドファンディングの実施など、もっと大きなことに向けて誰もが「便利になる」バリアフリー社会の実現を目指し、活動の幅を広げています。

◆講演後のアンケートから一部ご紹介

「聞こえないことが強みと言うすごくプラスな考え方、健常者が気が付けないことがある」

「聴覚障がいの方と一緒の場所にいられたこと」

「娘が中等度難聴です。これから社会人になる年頃ですが、公的支援はほぼなく、自力で乗り越えていくしないない状況です。が、本日のお話を聞いて、仲間となってくれるひとはたくさんいることがわかり、思いを強くしたところです。ありがとうございました。」

「野口さんの熱意と信念を直接お聴きすることができた。困りごとを具体的に聴くことができた。誤変換でも理解の助けになる、というのは言われてみれば当たり前だが「間違い = ダメ」と捉えてしまっていた考えの浅さを痛感。これは他のことにも役立つ。」

「普段はあまり意識しておらず、「聞こえ」は身近な問題であることを認識できました。」

「野口さんの話していることが、だんだんわかるようになりました。英語の発音に慣れるように。英語を聞くみたいな集中が必要です。聞き返すと申し訳ないと思ってしまいます。ちゃんと言わないとだめですよね。あんばいに慣れていきたいと思います。」

「みなさんが頑張っていることに刺激を受けました。またUDトークを知らなかったので、耳の聞こえにくくなっている母との会話で活用したいと思います。たいへん有難い企画でした。」

「プロジェクト達成のために大勢を巻き込むこと、人を信じて粘り強く諦めない、信念を持ってやり遂げようとする強い意志を感じました。」

困難を愉しみに、マイナスをプラスに、

気づきをかたちに変えていく。

超ポジティブな野口さんは女優ライトに照らされて
眩く輝いて見えました。

◆◆◆イベントを終えて

ふだん聴覚障がいの方のお話を聞く機会があまりない私にとって、野口さんのお話は正直最初聞き取りにくいと感じましたが、熱心にお話される姿に接し、集中して聴くことで分かるようになったのは不思議でした。私たちも日頃のコミュニケーションをちゃんと向き合って話を聴いているでしょうか。五感で感じとる、傾聴あっての対話だと野口さんに教えられた回でした。

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終了後、現場メンバーで懇親会のワンショット!
野口さん塚本さんとCBFに乾杯!
CBFプロジェクトに関する情報はこちらです。

▼聞こえない人の医療機関の困難をなくす|啓発漫画を未来の医療従事者へ
https://readyfor.jp/projects/CBF-PJ2022

▼医療現場のコミュニケーションバリアフリー化に塩野義製薬が挑戦
https://news.yahoo.co.jp/articles/46a0b4ba4a21c4d27acea733a9991f0b2f74feb3

▼誰もが隔たりなく つながりあえる社会へ
https://withnews.jp/extra/ishisotsushien/article/05/

◆講演資料のご案内 ならびに皆様へのお願い

この活動は、NPO法人SECIプレイスの社会教育の一環としての位置付けでもあります。
資料はこちらからダウンロードできます。

講演者のご厚意での提供ですので、お取り扱いには何卒御留意ねがいます。

◆次回のイベント案内

お申込みページはこちらです。お誘い合わせのうえ、参加をお待ちしております。
https://note.com/omuranobuo/n/nbebdd6c73eca
ノンフィクション作家の小松 成美さんのご登壇です。乞うご期待!

レポート作成:NPO法人SECI プレイス
ライティング:清水美也子@Assemblage LLC
WEB構成:水野昌彦@ideal brands.jp LLC

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