Bridge Terminal SECIプレイスEvent Vol.11 20240208

「あなたは今後、AIに代替されない仕事をし続ける自信がありますか?」

演者:
西原文乃様(立教大学 経営学部 准教授 博士(経営)一橋大学)
大村信夫氏(パラレルキャリア研究家・SECI プレイスアンバサダー)
日時:2024/2/8(木) 19:00~20:00(講演会) 20:00~(QA&懇親会)
場所:オンライン(Teams)
配信:BRIDGE TERMINAL
会費:無料
申込:404名
主催:Mission Lab
後援・協力:BRIDGE TERMINAL / NPO法人SECI プレイス / Assemblage LLC / ideal brands.jp LLC

https://taidan-20240208.peatix.com/
◆SECIモデルは現場でどう実践されたか?

今回のテーマはなんと、私たちSECIプレイスの冠となっている「SECIモデル」の基礎とも云える「知識創造理論」でございます。

ゲストの西原文乃先生とは、代表理事が学会でご一緒させていただいたり、教鞭をとっておられる立教大学ゼミ生の研究を聞かせていただいたり、社員が出前授業をさせていただいたりと…SECIプレイスとして様々な交流は持っていたのですが、なかなかこちらに登壇いただく機会を伺えずにいたのでした。

ですが此度、西原先生(私たちは敬愛を込めて文乃先生とお名前で呼ばせていただいております)が3冊目の著書を上梓され、その中の登場人物が代表理事をモデルとしたマンガ形式の本ということで、とんとん拍子に話が進み、今回の開催と相成った次第です。

■対談の様子

自己紹介とアイスブレイクの後、西原先生からイントロとして伝えたいこととして4つの主旨が挙げられまして、それに沿った形で進んでいきました。

  1. 知識
  2. SECIモデル
  3. 実践知リーダーシップ
■1. 知識とは

まず、ナレッジ・マネジメントとナレッジ・ベースド・マネジメントの違いについて説明がありました。ご本人からも重大発言をしてしまうと前置きがありましたが(※こことても重要です。もしかしたら、お目々を三角にされる向きもいらっしゃるかも。しかし、論の展開は自由ですものね!)ナレッジ・マネジメントは、ナレッジ・ベースド・マネジメントの一部分であって、ナレッジの取り扱い方に違いがあるということなんですね。

ナレッジ・マネジメントが「知識の管理と移転または共有」なのに対して、ナレッジ・ベースド・マネジメントは「知識を(掛け合わせた)創造」である点です。

知識をベースにして新たな知識を「創造」していくプロセスが知識創造理論の根幹です。私たちは「知識」というと学ぶもの=学習と捉えがちで、振り返ると学生時代はとにかく知識を吸収/インプットすることを主にしていてアウトプットはほぼ答案用紙だけだった記憶がありますよね。

社会人になってからは答えを出す、なんなら問いから生み出すことが求められるようになり、新しい知識を創造することが求められるようになるのです。ザッツ、イノベーションです。

西原先生は、ChatGPTに「人間と同じように知識を創れるか?」と質問をしてみたそうです。すると、「AIは新たに知識を創造するわけではない。AIは意識を持っていないので、訓練データから見つけたパターンを返しているだけで、単なる情報の組み合わせをしているに過ぎない」と回答したとのこと。身体を持つ人間こそが知識の源であり知識を新たに創造できるのは人間だけ、だから、私たち人間は自分を磨いていかなければならない、と西原先生は説かれました。

◇知識とは何か? 

知識創造理論では知識とは
「個人の全人的な信念や思いを真善美に向かって社会的に正当化するダイナミックなプロセス」
と定義しています。

正直、わかったような、やっぱり分からないですね、一つ一つ分解してみていきましょう。

・「個人の全人的1な信念や思い」
個人の信念や想いが起点になっていることが重要で、人間一人ひとりが持っている「あるべきすがた」「こう思う」「こうありたい」といった考えを、

・「真善美2に向かって」
普遍的な真善美という理想にアジャストしていくことによって、

・「社会的に正当化する」
独善的・独りよがりになることなく社会通念としても納得性の高い共通理解へと昇華させるために、

・「ダイナミックなプロセス」
対話や議論、内省を交えた知的コンバット3を経て創造される成果と過程、なのではないかと思うのです。合意形成を経て社会的にスケールする共創・協創のプロセスと言えます。

■2. SECIモデル

SECIモデルでは「暗黙知」「形式知」という2つの知識形態が出てきますが、料理に例えると職人の勘が暗黙知、レシピが形式知、実際に調理して得た知識が暗黙知ということになります。そしてここで重要になるのは、暗黙知は全ての知識のベースであるということです。暗黙知と形式知の関係は氷山のたとえで表せますが、氷山の一角というように、海面から上で見えているのが形式知、海中に沈んでいる氷山の大きな部分が暗黙知であるということを理解しておきたいです。このように、暗黙知は目には見えませんが、大きく広がっているわけで、私たちの暗黙知には無限の可能性があるんだと、西原先生は熱く語っていました。

SECIモデルの4象限

「SECIを回す」とよく言っていますが、SECIモデルは、知識がかたちを変えながら共同化(S)、表出化(E)、連結化(C)、内面化(I)の4つの象限の循環を繰り返して、より高次な次元にらせん状に発展していく概念モデルなのです。スパイラルアップです。

■3. 場

場とは知識がつくられるところ、ということで先生からの問いは「今ここ(この場)は『場』でしょうか?に「皆さんいますごく考えてらっしゃるから(知識をつくっている)場ではないですか?」と大村さん。
皆さん今は私の話を聴いて知識を巡らせていらっしゃるだけなので、まだ個人でSECIを回している状態です、SECIモデルは「組織的」知識創造のモデルなので、「みんなで回す」ことが重要で、それが「場」です、と西原先生。ということはこの後の懇親会が新たな知識を創る「場」になる!ということで納得です。

SECIが回る「場」SECILALAコミュニティ
◆村上さん登場
当法人代表理事 村上修司(中央)

ここで、本のモデルになった当法人代表理事の村上が登壇。(身内ですが登壇者ということで以降「村上さん」と表記させていただきます。)
質問してくれないと答えられないと謙遜する村上さん。そこで大村さんの対談スタイルが効果を発揮します。色々「暗黙知」が「表出化」することになりました。

村上さんのやったことは「場」づくり。彼の場合は「書庫」というEXCELでつくったナレッジ・データーベースでした。DBがなぜ「場」になるのかと言えば、そこに人が集まる仕掛けが組み込まれていたからです。

何もないところに人は集まりません。何かトクをすること、助かること、おもしろいこと、人の興味を引く何かがなければ人は集まってきません。はじめはインセンティブが必要なんです。「書庫」の場合それは「困りごと」でした。事業も異なる5社が合併して誰に何を聞いていいか全くわからない状況に陥っていて、困っている人は多かった、情報に飢えていたわけです。みんなが欲しかったのは学術論文ではなく「こんなときはこうする」という生きた情報、ハウツーですね、それが「書庫」にはあったわけです。ただ、情報がそこにあるだけでは人が集まり続けることはありません。コミュニケーションが存在しないからです。

そこで彼は一計を案じます。インプットしてくれた人にアウトプットを促す仕掛けを考えたのです。マメなお礼の返信、ポイント制でアウトプットの貢献度をスコア化する、気軽に投稿できる「しゃべり場」という掲示板機能の実装とか、マスコットキャラクター起用で親しみやすさをアピール、「何でも質問してもいいんだ、話していいんだ」という心理的安全性を担保して関係性の質と関与度を高めていったのです。その活動が上層部の目に留まり、一個人、一部署のEXCELは全社的なプロジェクトとなり、協力者の輪も広がり、オフィシャルなものとしてプラットホームに組み込まれていったのです。

村上さんは、俺についてこい的な強権リーダーではなく、メンバーや関係者を巻き込みながら「場」をつくるリーダー…自らを「グランド整備のおっちゃん」というように、関係性の質にこだわり、ひたすら「場」づくりに徹して関係者の自発性を引き出すことに尽力しました。

彼が活動で軸においていたものは、良い会社にしたい、困っている仲間を助けたいという「愛」、自分は良いことをやっているという自信と、みんなで知恵(知識)を出し合えばもっといいことが起こる、という「信念」、活動に参加する個々人自らが動かないと進まないという考えに基づいた「自発性」への拘り、関係性の質を高めるための「場」の存在でした。

そのことが共感を呼び、村上さんの退職後も後継者に引き継がれて進化を続けています。

その後継者たる多田浩子さん、今回の書籍化にあたり多大なご尽力をくださった編集者の東 寿浩さん、SECI婚!実践者の大久保遼子さんと、次々とステージに人が上がる対談は斬新でした。

気になる「実践知とリーダーシップ」のお話は時間切れで伺うことができませんでしたので、この場を借りて、本の引用によってお伝えしたいと思います。

■4. 実践知とリーダーシップ

村上さんのリーダーシップスタイルは前述の通りですが組織における知識創造/SECIを回すにはやはりリーダーの存在は必要です。本書では第3章で「ワイズリーダーシップ」という言葉が出てきます。

「ワイズリーダー」とは何でしょうか。西原先生の師匠、野中郁次郎先生は著書「ワイズカンパニー4」のカバー(ソデ部分)で『われわれは実践知を備えたリーダーを「ワイズリーダー」~中略~と読んでいる。』とあります。形式知と暗黙知を補完し知識(knowledge)を知恵(wisdom)に変換して、変化に即した行動に繋げることができる知識であり、経験によって培われる暗黙知(の一種)です。

理論はアタマではわかってはいても実際に行動や変革・イノベーションに繋がらないと悩む人や組織が少なくない中でリーダーの役割は重要です。知識創造を推進するワイズリーダーは、SECIをスパイラルアップさせるドライバーだからです。

これは大切なお話を聴き逃した!西原先生、またいずれ、このワイズリーダーについて教えてください。私たちもまだまだ出来ていませんので、実践知を身に付けていかなければなりません。よろしくお願いいたします!

***

  1. 「全人的(ぜんじんてき)」とは、人を身体や精神などの一側面からのみ見るのではなく、人格や社会的立場なども含めた総合的な観点から取り扱うさまを意味します。」と生成AI(Google Bard)は回答しました。本文に戻ります ↩︎
  2. ※真善美とはプラトンのギリシャ哲学に端を発し西欧哲学の中心命題として捉えられ、近世哲学におけるカントの三批判書によって定着していったとされています。日本でも「清く、正しく、美しく」という伝えがあるように人類が共通して希求する理想の典型と言えますね。本文に戻ります ↩︎
  3. ※皆さんも経験がおありだと思うのですが、会議などでの意思決定においても意見や見解の相違から激しい議論の応酬となったり、険悪なムードになったりして時には「大人の対応」や「声の大きい人」「人事権を掌握している人」の意見に不本意ながら「同調」したりすることもあると思うのですが、ここでいうダイナミックとはそういう圧力や忖度を越えて本音と本音でぶつかり合い個々の利害を超えた高い次元での共通理解を見つけるためのタマシイのぶつかり合いを指します。殴り合いこそしないもののイメージとしてはガキ大将どうしが取っ組み合いのケンカの末二人とものびてお互いを認め、寝っ転がって笑い合う、みたいな感じでしょうか。本文に戻ります ↩︎
  4. ※「ワイズカンパニー」野中郁次郎/竹中弘高、2020 https://amzn.asia/d/5rI8MAb 両氏の先著「知識創造企業」の続編とされ、時代変化を踏まえ企業がSECIをスパイラルアップしてイノベーションを起こし続けるに必要な「実践知」と「ワイズリーダー」について説いた必読の書 本文に戻ります ↩︎

***

◆おわりに

SECIモデルは「SECIを回す」というように循環のモデルであって、一度やって終わりではなくスパイラルの様に循環を繰り返しながらレベルアップしていく概念モデルです。

今回の対談と元となった「マンガでやさしくわかる知識創造」では、一見イメージしづらい「知識創造」や「SECIモデル」を、実在の人物とその18年超にわたる奮闘の歴史をモデルに、ストーリー仕立てのマンガを交えて解説しています。今このレポートを読んでくださっている皆さんは少なからずSECIに興味を持たれた/既に研究・実践されている方たちだと思います。このレポートを読んで少しでもSECIとこの本に興味を持っていただけたら私たちも嬉しいですし、さらには原著となる「知識創造企業」「ワイズカンパニー」も手に取っていただけたら、もっと嬉しいです。

さいごに「マンガでやさしくわかる知識創造」のAmazonレビューを引用してレポートを終えたいと思います。

読みやすく、一気読みしました。良い意味でまるで親が子供に読み聞かせしているような優しい口調で書かれているので分かりにくい理論を多くの人に知ってもらいたいという筆者の思いが伝わってきました。
SECIモデルは古いと思っている識者さんもいるようですがこの本では随所に最近話題の経営用語を交えて説明しています。またそれらを用いて説明できるところにSECIモデルがあらゆる理論を包含する広範で今なお通用する概念だということの査証ではないでしょうか。読了して感じた最重要なメッセージは、この本を読んだだけで終わらせず実践知に変えること=行動することだと思います。理屈を並べて分析して見せるのは学者の先生に任せて、実務者はそのフィールドにおいて場をつくり行動し仲間を増やし実践していくこと、それをスパイラルの様に連続・継続して行っていくことがAIに代替されない人としての組織だと受け止めました。マンガのストーリーは主人公が人事異動で別部署に転籍となり新たなスタートを切るところで終わっていますが、現実社会でも物事は連続しているわけでこの主人公にも更なる試練が待ち受けていることでしょう。活動をやって終わりにせず継続してスパイラルアップしていくことがSECIモデルのもう一つの重要ポイントなのだと思いました。

https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R2O83KI2EOGN91/ref=cm_cr_dp_d_rvw_ttl?ie=UTF8&ASIN=4800591643


書籍の紹介はこちらです。

▼著書:「マンガでやさしくわかる知識創造」
https://www.amazon.co.jp/dp/4023318612

マスコットキャラクター せきさん
◆登壇者の情報


西原 文乃(にしはら あやの)
立教大学 経営学部 准教授
博士(経営)一橋大学
組織的知識創造理論をベースに、新たな価値創造のプロセスや仕組みに関して研究している。具体的には、真善美や共通善の実現を目指すイノベーションやリーダーシップ、新たな価値を創造する場づくりや知のエコシステム、現在を起点に過去から未来へ向かう戦略的ナラティブ・物語りについて、企業やコミュニティ、プロジェクトチームなどにおける事例の研究を行っている。
Scrum Inc.認定スクラムマスター(LSM)

▼西原文乃先生(立教大学のページへ)
https://cob-faculty.rikkyo.ac.jp/member/19/


村上 修司(むらかみ しゅうじ)
1998年4月、大手住宅建材メーカーに入社。
経理社員として配属され、11年間は工場経理に従事し、国内7工場を回る。
その後本社経理部に異動し、全社決算や経理部門全体の教育関連業務に携わる。
2016年4月、工場経理時代に自ら立ち上げ地道に築き上げてきたナレッジマネジメント
活動の全社展開がミッションとなり、情報システム部へ転属。
2018年9月、会社の枠を越えたコミュニティ「SECILALA(セキララ)」を設立。
2019年6月、日本ナレッジ・マネジメント学会理事に就任。
2020年2月、大手住宅建材メーカーが運営する愛知県常滑市のミュージアムに赴任。
2021年4月、ナレッジマネジメント支援ツールのITベンダー企業、マネジャー就任。
2022年11月14日、NPO法人設立、代表理事に就任。

日本ナレッジ・マネジメント学会 理事
生涯学習コーディネーター
整理収納アドバイザー2級

◆次回のイベント案内 特別コラボ企画

【2024/2/21(水)19:00~】
アクティブブックダイアログで
『マンガで やさしくわかる 知識創造』
をやります!

SECI体感ラボ & SECIプレイスの共催で、未来型読書法ABD*を開催いたします!
今回なんと、マンガのモデルとなった、NPO法人SECIプレイス代表理事の村上修司さんにもご参加いただきます!

今回対談の元となったこの本をABD®(アクティブ・ブック・ダイアローグ®)で読んで語り合おう!という企画です。もう読んで誰かに内容を話したくてウズウズしてる方、良い機会ですのでこの「場」に参加して暗黙知を共同化・連結化していただければと思います!


詳細・お申し込みはこちらです(Peatixページに移動します)
https://peatix.com/event/3834952/view

◆次回のイベント案内 通常開催

あなたの「パーパス(存在意義)」は何ですか?

3月7日は、ブランドアイデンティティの共創やインナーブランディングの支援をおこなう株式会社サインコサインの代表として、企業だけでなく個人のパーパスやミッションにも向き合い続けている加来幸樹様をお招きして、
「個人のパーパス」の見つけ方
~ なぜいま「個人のパーパス」が注目されるのか ~

というテーマでお話を伺います。

この機会に、自分のパーパスやミッションを見つけて信じること、そして仲間や会社のパーパスにも耳を傾けることの意味やそのための方法について語り合ってみませんか?

詳細・お申し込みはこちらです(Peatixページに移動します)
https://taidan-20240307.peatix.com/

◆運営について

この活動は、NPO法人SECIプレイスの社会教育の一環としての位置付けでもあります。

運営メンバー(五十音順):青木千恵 青山純平 大崎功一 中村恒司 村松成治

レポート作成:NPO法人SECI プレイス
取材:田中やえ/水野昌彦
ライティング監修:清水美也子@Assemblage LLC
WEB構成:水野昌彦@ideal brands.jp LLC
主催代表:大村信夫(片付けパパ)

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