BRIDGE TERMINAL SECIプレイスEvent Vol.13 20240404 片付けパパ対談シリーズ#19
「片付けパパ」こと 大村 信夫 さんが、旬なトピックでゲストと対談するシリーズ。
第19回目は、国際協力機構(JICA)サステナビリティ特命審議役の見宮 美早(けんみや みさ)さんから、
これからの時代のDQ(良識指数)とは?
~ IQ(知能指数)EQ(心の知能指数)に続く資質 ~
というテーマでお話を伺います。
今回お招きした見宮さんは、公私含めて約45カ国訪問、5カ国に在住の経験があり、世界とつながることで多くを学び、経験されています。いまは、途上国100カ国以上を相手にするJICAという組織でサステナビリティを推進しています。そんな見宮さんがDQを説く訳とは?
冒頭に~なぜDQなのか、とご自分で振りつつ「すいません私もよく分かりません」とご謙遜。
その言葉に会場もどっと沸きいいムードで始まりました。ゲストの方は、配信会場に関係者や友人などをお連れできるのですが、今回はなんと45人ものノリのよい皆さんが参加されました。
「仕事もプライベートも繋げる繋がる人生を走ってきてる」と仰る見宮さん、MCの大村さんともRUN1でのつながりでサブ42だそう。どうやら「つながる」がDQを理解するキーワードとなりそうです。
◆つながることで見えてくるもの
「出る杭は打たれるが 出ない杭は朽ちる」このお父様からの言葉が世界を駆けまわる見宮さんのスタートラインとなりました。「機会はどこにでもいつでもあるわけではない」と「単位をとるのが楽だから」と取ったロシア語をきっかけに初めての海外旅行がロシア!(当時もビザは必要、そう簡単に行ける国ではないです)翌年はアジアにバックパッカーで行ったり、出る杭っぷりを発揮します。
その中で感じた問題意識で、環境破壊や人権侵害をするような開発事業に反対の立場をとるNGOに参加されます。そこでの、学生であっても一人前として扱われた経験や、米国大学院では暗記は出来てもアーギュメント3ができないとダメ出しされたりして出る杭は打たれることになります。しかしそんな環境に自ら飛び込み、開き直ることで現在につながる出会いと確信を得ることになりました。
◆NGOは尖ってなんぼ~主張からの学び
「Public Citizen4」「Center for Public Interest5」「Japan Offspring Fund6」とNGOを渡り歩いた(走り抜けた?)見宮さんですが、ともすれば抵抗勢力とバチバチとなるような活動に身を投じることで、現場に足を運び、多様性を認め、科学的根拠と検証に基づくプロ意識を学び取ってこられました。
そんな中、一方的に外から批判するだけでいいのか、相手にも相応の主張があり、何が正しいのか分からなくなってくることがあり(多様性の受容ですね)、「だったら中に入って見てやろう」と、「何なら中から変えてやる!」という「むちゃくちゃ若気の至り」(見宮さん談)で開発側の政府機関であるJICAの門を叩きます。この発想と行動力には瞠目です@@
◆海外赴任での不思議な経験
JICAでの赴任先はケニアとフィリピンでしたがその間タンザニアとベトナムで育児休業をとり、普通の現地のママたちとおしゃべりしながら、タンザニアでは地平線を眺めながら、朝は近所に牛乳を取りに行く生活をした体験から、幸せって何だろうと考えてしまったそうです。
◆見えてきた日本と途上国の未来
JICAで発展途上国と向き合って世界を見ていると、途上国と先進国での人口とGDPの逆転がデータに表れていて、世界との対比でこのままいくと崖から転落する日本の現在地が見えてきます。ただ変化が見えるということはそれを機会に変えられないかと考える、それがサスティナビリティ推進ですと見宮さん。これまでの経済一辺倒から脱却して別の幸せのかたちというものを考えてみる。人の価値観、企業の価値観を変えていく時期にきているのではないかと投げかけをされました。
◆機会はどこにでも、いつでもあるわけではない
世界を見渡す視野でみれば、日本は機会にあふれている豊かな国であるということ。
来⽇中に戦闘勃発、帰国できないガザの中学⽣や教育の機会を奪われたアフガニスタンの⼥性・⼥⼦。職業の選択、⾃分の⼈⽣の選択がない多くの国や地域があり「夢はある、能⼒もある、なのに機会がない」世界からすれば、日本はできることはいっぱいあるのではないかと見宮さんは問います。
日本の中で普通と思っていることが世界では通用しないことだったり、逆に素晴らしいことだったり、自分の常識を疑ってみる、客観視してみることで何が正しいのか、何をすべきかを考え、そして行動すること、挑戦することがこれからの日本を考えるうえで必要になってくるマインドセットなのではないかと説かれました。
◆繋がりを作ること。スポーツを好例に
世界を知る、人と機会を繋げるという意味で、例えばスポーツは大きな価値を持っています。公平なルールのもと、勝っても負けても恨みっこなし、相手をリスペクトする。人種や国境、言語、障がいのある方も楽しめる多様性。感動と共感、そして行動したくなる、これらの価値は世界共通の価値です。経済的な指標とは違う方向での今必要視されている新しい価値をもたらしてくれるものだと思うのです。7
◆IQ・EQ・そしてDQ
慣習とか常識と言われていることでも、広い視野をもって見直して、疑問に思ったら自分のアタマで考えることをしないと変革は起こらないのですね。そのためには人とつながって仲間を見つけ、働きかけること。
そして一人でも多くの人にとって良いことを行おうとするこころを持つことが大切だと、自分の気持ちを理解し、相手の気持ちも理解する、そこからさらに目の前の相手だけでなくより多くの人にとって力になろうと思う力、それがDQ(良識指数)なのではないか、今求められているのではないかと問いかけます。
「良識」とは何か?
道徳と同じようなものですか?と大村さん。
-いい質問ですね^^ライターも聞きたいです。-
道徳とはちょっと違うと見宮さん。道徳とは(その国・地域の)社会規範に縛られている側面があって国や地域によってそれぞれ違うと。国や地域、思想信条を越えた世界に共通する価値観だと。
IQ8が、論理的に考えたり、問題を解決したりする能力を表すものだとしたら、EQ9は、自分の感情をコントロールしたり、他人の感情を理解したりする能力。そしてDQ10は、国や地域、人種やイデオロギーを越えた、人間として「健全」な考え方、人を正当に扱う、尊厳をもって接すること、普遍的に大切にすべきものを「良識」としたのではないでしょうか。
DQはIQ、EQに次ぐ第3の能力ですが、対立軸ではなくIQ+EQがあった上でのDQであり、3つの力をバランスよく伸ばすことが大切なのだと受け止めました。
IQで問題を解決し、EQで人と良い関係を築き、DQで社会に貢献する。
そしてDQは、「全ての人に開かれていて、後天的に伸ばすことができる」と見宮さんは説きます。
これからの時代、誰しもDQ「良識」あるリーダーであるし、なれる。そして、
・創造とともに破壊にも気を配る
・EQの高い人や組織をつくり、多様な人々が共通目的のために協力し、課題を解決する力に導く事だとも仰いました。
世界を見てきた見宮さんだからこその含蓄のあるお話と納得です。
さいごに見宮さんが「お伝えしたかったことが全て入っている」とされた緒⽅貞⼦元JICA理事⻑のことばを引用されていましたのでここでも引用させていただきたいと思います。
「100年後のみなさんへ
共に生きるということ be humane (100年インタビュー)
10年、20年後はいざしらず、100年後というのは、
想像を絶する遠い将来ですので、グローバル化の結果、
そのときにまだ『国』が残っているのか、
『地域』が残っているのか、すらわかりませんが、
⼈間が⽣きている限りは、いろいろな試みを続けていくと思うのです。
その中で、⽇本も様々な形で、いい考え⽅、いい試み、多様な
幸せの在り⽅を打ち出して、他を引っ張っていける⽴派な
⼈々と、国であってほしいと思っております」
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◆ギャラリー
◇らいたーずぼいす
見宮さんはものすごい人間力のある方で
初めてお話ししましたが
ものすごいラクというか壁がなくて
前からの知り合い?って錯覚してしまいそう
になりました^^
見宮さんのお人柄のおかげで
ものすごい人数が集まりました♪
おかげで運営側も
新しい視点を得ることができました。(Y)
人と繋がることの大切さ、EQからDQへ、
現代社会に閉塞感を抱く人々を
組織の枠を越えた人の繋がりを作り、場をつくり、
きっかけをつくり、知を共有する。
『みんなのチカラをみんなで活かす』、私たちSECIプレイスが目指していることにも
無くてはならない視点でした。
つながりに今一度、感謝です!(M)
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- ランニングチーム乱舞「RANVE」は「走りたい人がみんなを巻き込んでやる」をポリシーに誰もが企画者・運営者になり参加者がGiverの精神で参画しているコミュニティです。 ↩︎
- 見宮さんご自身もフルマラソン4回出場でサブフォー(サブ4)とは、42.195kmのフルマラソンを4時間以内で走りきることを指します。やっぱり体力ですね、すごっ! ↩︎
- アーギュメント(argument)とは意見や主張を述べ合う議論や論理的な根拠や証拠を示す主張、の意味があります。ライターも苦手、ニホンジンあるあるですね。 ↩︎
- Public Citizen は、米国の非営利で進歩的な[2] 消費者権利 擁護団体であり、ワシントン DCに拠点を置くシンクタンクです。 ↩︎
- Center for Science in the Public Interest ( CSPI ) は、ワシントン DCを拠点とする非営利の 監視団体であり、より安全で健康的な食品を提唱する 消費者擁護 団体です。 ↩︎
- Japan Offspring Fund日本子孫基金は1984年に設立された、非政治団体(NPO)。 JOFの活動は、食品と暮らしの安全について独自の調査を行ない、消費者に「真実」の情報を提供しています。 ↩︎
- 母国を愛しているからーーオリンピックを駆け抜けた南スーダン陸上選手・アブラハムが走る理由 特別マンガ連載「Running for peace and love」第4回 ↩︎
- IQ(知能指数)は、論理的に考えたり、問題を解決したりする能力を表す数値。 ↩︎
- EQ(感情指数)は、心の知能指数とも言われ、自分の感情をコントロールしたり、他人の感情を理解したりする能力を表す数値。 ↩︎
- DQ(良識指数)は、EQを一歩進めて、人が他人に共感し、人として正しいことをするための心の資質を表す数値。 ↩︎
※ 対談で話された内容・意見などは見宮さん個人の見解であり、組織の意見を代表するものではありません。
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◆登壇者の情報
見宮 美早(けんみや みさ)さん
国際協力機構(JICA)サステナビリティ特命審議役
学生の頃から日本と米国でNGO勤務。JICAに就職して以降、ケニアとフィリピンに通算9年間赴任、現地で開発援助プロジェクトや協議に従事。JICA本部では地球環境部や広報部勤務を踏まえて、現在、JICAの組織運営と事業におけるサステナビリティ推進を担う。公私含めて約45カ国訪問。
並行して、公私融合にて「スポーツと開発」の促進、LinkedIn(SNS)での発信(Top Voices 2021に選出、(1) 見宮 美早 | LinkedIn)、兼業(東京医科大学「国際関係論」)、母校横浜市大での8年連続講義、フルマラソン4回サブフォー達成。二児の母としてタンザニアとベトナムで子育て(育児休業)。行動しながら考える人生。
【著書/寄稿】
▼「屋根もない、家もない、でも、希望を胸に フィリピン台風ヨランダからの復興」
2018年、佐伯印刷、共著
2013年11月、100年に一度と言われる超大型台風「ヨランダ」が、フィリピン中部の東ビサヤ地方を襲いました。記録的な規模の高潮と強風により、死者・行方不明者は約8000人、被災者数は1600万人以上に達し、甚大な被害をもたらしました。見宮さんは、被災地域への緊急支援と、それに引き続いて実施された復旧・復興を後押しする技術協力プロジェクトの中心人物として活動されました。ただ単に災害前と同じ状態に戻すのではなく、災害に強いより良い復興を目指す「Build Back Better」という考え方に基づき、フィリピンの人々との関係を第一に奮闘した日々。災害は、より良い社会を建設するチャンスと信じて、緊急支援からシームレスな復旧・復興支援まで、見宮さんが携わった約5年間にわたる激動の日々は書籍にもなっています。
https://www.jica.go.jp/jica_ri/publication/projecthistory/ph_19.html
▼より多くの方に読んでいただくためのマンガ版!
プロジェクトヒストリ-
『屋根もない、家もない、でも、希望を胸に フィリピン巨大台風ヨランダからの復興』
https://www.jica.go.jp/Resource/publication/manga/philippine_yolanda.html
【メディア掲載】
▼JICA広報誌
JICAが取り組むサステナビリティ経営とは?|JICA MAGAZINE | 広報誌 JICAマガジン
▼GetNavi
「『絶対に伝えたい』ことは、ピュアに常識を飛び越えて発信!佐渡島庸平xJICA広報室:伝えるアイディアをとことん探せ」2021年8月、GetNavi ウェブ版
「絶対に伝えたい」ことは、ピュアに常識を飛び越えて発信! 佐渡島 庸平×JICA広報室:伝えきるアイデアをとことん探れ | GetNavi web ゲットナビ
◆次回のイベント案内
あなたは「言いにくいことを伝えること」できていますか?
第20回目は、マンパワーグループ株式会社シニアコンサルタントの難波猛(なんば たけし)様から、
ネガティブフィードバック
~「言いにくいこと」を相手にきちんと伝える技術~
というテーマでお話を伺います。
ネガティブフィードバックは、相手に変化を促し、改善を期待する行為です。
しかしながら、伝え方を間違えると、相手のやる気や自主性を奪う危険も秘めているのです。
「ネガティブフィードバック」の上手な伝え方ができれば、
・言いにくいことを落ち着いて伝えられる
・相手との関係性が最終的には良好になる
・相手が自律的に成長する
という結果につながります。
ぜひこの機会に「ネガティブフィードバック」の上手な伝え方・メソッドを習得しましょう!
詳細・お申し込みはこちらです(Peatixページに移動します)
https://taidan-20240509.peatix.com/
◆運営について
この活動は、NPO法人SECIプレイスの社会教育の一環としての位置付けでもあります。
運営メンバー(五十音順):青木千恵 青山純平 大崎功一 中村恒司 原田篤史 眞島かな子 村松成治
レポート作成:NPO法人SECI プレイス
取材:田中やえ/水野昌彦
ライティング/WEB構成:水野昌彦@ideal brands.jp LLC
ライティング監修:清水美也子@Assemblage LLC
主催代表:大村信夫(片付けパパ)